:: 第21話 :: 「膀胱炎の予防法はあるの?」 ▲TOP
膀胱炎は、女性にとっては「膀胱の風邪ひき」と言われるくらい、繰り返しかかる病気なので、予防法が実際にあれば、そんな良いことはありません。一般的に、疲労、排尿の我慢、体の冷えなどが誘困になると考えられています。しかし、医学的に「これだ!」という絶対的な予防法は残念ながら見当たりません。
そんななかで、米国泌尿器科医ゴダード氏が薦めている予防法を紹介しましょう。
○排尿をあまり我慢しないこと。だいたい3時間ごとの排尿を心がける。
○水分は毎日比較的多めにとる。
○性交の後は排尿し、水を2杯飲む。
○排便後は肛門の周囲を丁寧に前から後ろにふき、同じトイレットペーパーを二度ふきしない。
これらの予防法のうち、最後のものは医学的にも根拠があります。というのは、膀胱炎の原因菌となる大腸菌は肛門の周囲に常在しています。そこから、この菌は膣内に入り込みそこで増殖してから、尿道を逆行して膀胱に侵入し膀胱炎を起こすのです。ですから、排便後はトイレットペーパーで前から後ろの方向にふいて、膣の方に肛門周囲の細菌を移動させないことが膀胱炎の予防になるというわけです。
ところで、18世紀までヨーロッパの女性はノーパンティーで、排尿後に紙でふく習慣はありませんでした。ところが19世紀になり、女性がパンティーをはくようになってから、排尿後ぬれたままではパンティーが汚れるので、紙でふくようになったのです。
そこで、排尿後のトイレットペーパーのふき方は排便のときとは反対に、後ろから前の方にふくことです。そうしないと、膣の周囲の雑菌が尿道へ移動してしまい、膀胱炎が起きやすくなりますから。
:: 第22話 :: 「風邪と間違えられる腎盂腎炎」 ▲TOP
膀胱炎は、女性にとってはありふれた病気の一つですが、時々膀胱炎にかかった人が腎盂腎炎を合併して高熱を出して、入院することがあります。この女性がよくかかる腎盂腎炎という病気は、膀胱炎に比べるとあまり知られていないため、風邪や肺炎とよく間違えられて治療され、悪化することがありますので要注意。
腎盂腎炎は、細菌が膀胱から尿管をへて腎臓に到達し、そこで炎症が拡がったものです。従って、最初に膀胱炎を起こし、数日してから腎盂腎炎になるわけです。しかし、なかには膀胱炎を伴わない場合もあります。症状は、発熱、腰痛と腹痛および全身倦怠感が典型的です。ほとんどの患者さんは39度以上の高熱になります。なかには40度以上の体温になることもあります。左右どちらかの脇腹が痛くなり、拳で叩くと激しい痛みを感じます。
治療は基本的に入院して行います。安静と補液点滴、抗生物質の使用が基本です。一般には、これらの処置をして、2〜3日は熱が上がったり、下がったりしますが、急性期に正しい治療をすれば比較的簡単に治ります。
しかし、腎盂腎炎が危険なのは、尿管結石や尿道狭窄、前立腺肥大症などの病気を伴っている場合です。というのは、これらの病気を治療しないと、いくら細菌に効く抗生物質を使用しても腎盂腎炎は治らないからです。しかも、病気が悪化して、細菌が体中に廻り、致命的な肺血症に進行してしまうことがあります。ですから、それらの病気に対しては泌尿器科的な専門治療を最初に行うことが必要となります。
さて、繰り返し起こす腎盂腎炎を原因の一つで有名なのは「膀胱尿管逆流症」という病気です。これは膀胱の尿が排尿のたびに腎臓の方に逆流する病気で、成人女性ばかりでなく子供にも発見されます。治療は開腹して逆流防止の手術をします。最近は、内視鏡手術で比較的簡単に治る場合もあります。
:: 第23話 :: 「風邪と間違えられる中年男性の前立腺炎」 ▲TOP
前回の講座では、女性に多い腎盂腎炎という病気が、風邪や肺炎とよく間違えられて治療され、悪化することがあることをお話しました。同様のことが、中年男性の泌尿器科の病気でも起こることがあります。その病気が急性前立腺炎といわれるものです。
前立腺というのは男性の膀胱と尿道の境目に存在する臓器です。尿道を取り巻いている構造になっているので、たとえて言うと、リンゴの果肉の部分が前立腺で、芯の部分が尿道というわけです。男なら子供でも大人でももっている臓器ですが、その働きは思春期を過ぎてから初めて発揮します。すなわち、前立腺から作られる液は精液の50%を占め、そしてその前立腺液のなかには精子の活動に必要な栄養物が豊富に含まれています。ですから、前立腺は子供を作るためにはなくてはならない臓器というわけです。
この前立腺に細菌が感染し、炎症が拡がったものが急性前立腺炎です。症状は、発熱、筋肉痛、関節痛および全身倦怠感が出現します。そのためしばしば風邪と間違えられることがあります。体温は39度以上、なかには40度以上の高熱になります。
多くは、排尿痛、頻尿や排尿困難などを合併しますので、この点が風邪と違うところです。
診断は、尿を検査して白血球や細菌の確認をします。前立腺を触るとブヨブヨした感じで、患者さんは激しい痛みを訴えます。超音波検査では、前立腺は腫れて大きくなり、血流が増えているのがわかります。治療は安静と補液点滴、抗生物質の使用が基本です。2〜3日は熱が上がったり、下がったりしますが、だいたい1週間以内に下熱治癒します。しかし、これらの治療で症状が改善しない場合は、内視鏡で前立腺の病巣を切除することもあります。
しかし、前立腺は抗生物質の浸透が弱い臓器なので、一時的に下熱して治癒したように見えても、細菌が死なないで隠れていて、再び暴れだすことがあります。それで、下熱しても2〜4週間は経口で抗生物質を服用してもらいます。
:: 第24話 :: 「激痛の王様、尿管結石のはなし」 ▲TOP
激しい痛みを伴う病気としては、卵巣や精巣の茎の部分がねじれる捻転症や、尿路や胆管の結石症などが有名です。なかでも、激痛の最たるものは、尿管結石です。その痛みたるや、激痛の王様といわれ、経験者は異口同音に、「死ぬほど痛い」と言います。ある患者さんなどは、疝痛発作のため記憶を失い(逆行性健忘症)、家を出て、病院を受診し、緊急手術したまでの間のことを、全く覚えていないほどでした。
人間の尿の中には、種々な無機質が溶けています。そのなかの蓚酸カルシウムやリン酸マグネシウム、尿酸などが結晶化して固まったものが結石です。まず結石は最初に腎臓で作られ、大きさは砂粒から腎臓全体に拡がるサンゴ状結石まであります。この結石が尿管に下降してくる途中で詰まると、腎臓で作られた尿が膀胱まで降りて来ないので、尿管や腎臓がパンパンに腫れて、あの激しい痛みを引き起こすのです。
結石がどうして作られるのか、現在でもまだ完全に解明されておりません。原因の一つとして、結石が出来やすい体質があると考えられています。ですから、親兄弟や親戚に同じように尿管結石が発病することはまれでありません。もう一つ、高カロリー、高タンパク質の食事による高脂血症、肥満、痛風などが結石作成の重要な原因とあげられています。この尿路結石は、有史以前から人類と縁のある病気でした。驚くなかれ、今から7千年前と推定されるエジプトのミイラから膀胱結石が発見されたのです。この結石の持ち主は推定年齢10歳代。成分は尿酸で、肉食によるものと推定されます。
このように、古代から近代にかけて、結石の大部分は下部尿路の膀胱結石でした。しかし、二十世紀になると、どういうわけか腎結石や尿管結石といった上部尿路の結石が増加してきて、第一次世界大戦以降は、後者が前者を追越してしまいました。これは、「結石波」と呼ばれ、世界的に共通の現象となりました。実際、我国では上部尿路結石が95%を占め、下部尿路結石はわずか5%の割合です。
:: 第25話 :: 「激痛の王様、尿管結石のはなし(2)」 ▲TOP
前回(第24話)では、尿管結石は「死ぬほど痛い」病気であるとお話ししました。その激痛発作の治療ですが、一般的に鎮痛剤の座薬や注射を行います。それでも治まらない時は、麻薬系統の薬を用いることがあります。これらの治療で、だいたい1〜3時間で痛みは治まります。しかし、私の経験した患者さんで半日激痛が持続した例もあります。患者さんが早く痛みから解放されることを強く希望する場合は、その日のうちに腰椎麻酔を行って、砕石手術を行う場合もあります。
ところで、夜中、身近に鎮痛剤がなく、激痛発作が起きた時に試してみる価値のある方法を教えましょう。まず、患者さんをうつぶせに寝かせます。次に、痛みのある側の背骨の脇の筋肉を背中から尻の方に向かって、親指で強く押していきます。そうすると一番痛みを感じる部位(圧痛点)があるはずです。そこを力一杯親指で押します。患者さんは「痛い、痛い」と訴えますが、2〜3分して親指を外すと嘘のように痛みが消えます。消えないまでも大変楽になりますので、ぜひ試してみてください。
さて、尿管結石の診断はまず尿検査からはじめます。結石発作の場合、尿に必ず血液が混じりますので、尿は目で見て真っ赤な色になります。しかし、見た目は正常な場合もありますが、その時は顕微鏡で観察すると血液が混じっているのがわかります。次に、尿路造影検査を行います。これは造影剤を静脈に注射し、その造影剤が腎臓から排泄され腎盂、尿管および膀胱に充満した状態をレントゲン撮影するものです。結石はレントゲン撮影で白く映ります。そして、その石のため尿の流れが悪くなるため、結石より上の尿管は水尿管といって普段の何倍もの太さになります。
尿管結石の診断でしばしば迷うのは、レントゲンに映らない結石の場合です。尿酸結石など、特殊な結石によるものです。この場合、威力を発揮するのがCT検査で、確実に診断することができます。
:: 第26話 :: 「激痛の王様、尿管結石のはなし(3)」 ▲TOP
今回、「死ぬほど痛い」病気である尿管結石の治療についてお話します。
まず、治療法を決める場合、結石の大きさが重要となります。結石の大きさが4ミリ以下の場合は、100%間違いなく自然に膀胱まで落下し、次に尿道を通って、尿と一緒に体の外に排出します。それで、患者さんには結石を出やすくするお薬を飲んでもらいます。5ミリから9ミリまでの結石の場合は、約半数が自然に排出しますが、残りはなかなか排出しません。ましてや、10ミリ以上の結石では、自然に排出することはほとんど期待できません。したがって、5ミリ以上の結石の場合、手術治療を含めた、なんらかの治療が必要となります。
手術治療には、お腹を切る方法と、お腹を切らない方法があります。10数年前迄は、切石術といってお腹を切開し、結石のある部分の尿管を切開して石を摘出していました。そのため、2〜3週間の入院が必要でした。最近では、内視鏡的砕石術というお腹を切らない方法が主流になっています。この方法は、麻酔下に尿道より尿管まで尿管鏡という細い内視鏡を挿入し、テレビモニターで見ながら、結石を細かく砕いていく方法です。結石を細かく砕くためには、レーザーや超音波などの高エネルギーの装置が用いられます。熟練を要する手術ですが、短期間の入院ですみます。場合によっては外来治療も可能です。
もう一つ、「体外衝撃波結石破砕術」と呼ばれている極めて画期的な術式があります。これは、体外より衝撃波と呼ばれる音波を結石に集中させて、結石を破砕するものです。患者さんにはベットの上でただ横になってもらった状態で、あとは治療装置が自動的に行います。麻酔を行わず、鎮痛剤のみ使用します。大部分の患者さんは、外来で治療します。結石の大きな場合や尿路感染症を合併している場合などでは、入院して治療します。
ところで、砕いた結石の運命はというと、いうまでもなく、粉末状になって尿とともに自然に体外に排出されるのです。
:: 第27話 :: 「北海道は性感染症王国」 ▲TOP
この文章のショッキングな題名は、平成17年10月8日北見市民会館で開催された第14回北海道思春期研究会の基調講演のなかで、熊本悦明氏(性の健康学財団名誉会頭・札幌医科大学名誉教授)が述べた言葉であります。もしこれが事実であれば、我々道民にとっては不名誉なことばかりでなく、医学的にも、社会的にもかなり深刻で重大な問題である。
さて、性行為またはそれに類似する行為によって感染する病気は、以前は「性病」、現在では「性感染症」と呼ばれています。従来の性病と呼ばれるものは、淋病、梅毒、軟性下かん、性病性リンパ肉芽腫、ソ径肉芽腫の5つの病気に限られていました。しかし、最近では、淋病以外の病気はほとんど姿を消し、代わりに増えているのが、クラミジア、ウィルス性肝炎、ヘルペス、コンジローム、トリコモナスなどです。それに、「現代の黒死病」と呼ばれているエイズがあります。
なかでも近年激増しているのが、クラミジア感染症です。クラミジアにかかると、男性の場合は尿道痛・不快感、尿道からの膿の分泌、女性の場合は帯下、外陰部の不快感などの症状が出現します。しかし、このような症状が出現するのは、全感染者のうち女性では5分の1、男性では2分の1と推定されています。驚くことに、残りの大多数は無症状で放置され、保菌者として慢性化するのです。
そして、悪化すると不妊症の原因になったり、女性では腹膜炎、男性では精嚢炎や精巣上体炎などの重症な病気の原因になります。
このクラミジア感染症の増加は、無防備な性交渉によるものですが、その割合は全国レベルでは十代後半の未婚女性の10人に1人となっています。ところが、本道の場合では、この全国平均に較べると実に1.5倍も高くなっているのです。この事実を熊本氏は冒頭に示した言葉で強調したのです。
ところで、道産子気質とは「明るく自立的、開放的、新しもの好き」だそうです。しかし、こんな道産子の長所(?)が性感染症を助長させるとしたら考えものですね。
:: 第28話 :: 「在原業平も性感染症にかかった?」 ▲TOP
江戸川柳に、「業平のカサをかかぬも不思議なり」という句があります。業平とは、平安時代の歌人で、希代のプレイボーイ「在原業平」のこと。カサ(瘡)とは、この場合性感染症のことです。すなわち、あれほど多数の女性と褥(しとね)をともにした業平が、カサの毒に当たったという話を聞かないのは、不思議だというわけです。
実際、現代医学でもこの「在原業平」と同じようなことが起こっています。すなわち、性感染症は病気を持っている相手とセックスして感染するものですが、必ずしも100%感染するものではありません。現在若い世代に深く蔓延しているクラミジア感染症では、相手の女性がクラミジアの場合、男性がかかる割合は、6〜7割。相手の男性がクラミジアの場合、女性がかかる割合は7〜8割といわれています。エイズの場合では感染率は1割以下と言われています。
20代の未婚女性のクラミジア感染に関するある調査研究によると、今まで経験したセックスフレンドが1〜2人の場合では、約5%の女性が感染していました。一方、セックスフレンドが3人以上の場合は、20%以上の感染率をしめしました。このように、セックスの相手が多くなるほど性感染症にかかる割合も高くなるのは確実です。ところが、この調査のなかで、セックスフレンドが11人以上の女性のなかに、驚いたことと言おうか、不思議なことにクラミジアに感染していない人もいたのです。
ですから、冒頭の川柳の業平のように、数多くの浮気を経験しても性感染症にかからない悪運強い男もいる反面、初めてのセックスで性感染症にかかる運の悪い男もいるのです。
さて、この感染する、しないの違いがどこから来るのかは現在の医学でも不明です。おそらく病原体に対する抵抗力の個人差によることが大きいと考えられます。 とはいえ、運に頼らずに、有難迷惑なお土産(性感染症)は貰わないように、予防(コンドーム)が大切です。
:: 第29話 :: 「歴史の中の性感染症」 ▲TOP
性感染症は紀元前のギリシャ医学の頃から知られた悩ましい病気です。そして古今東西、歴史上の有名人物が性感染症にかかったと言われています。たとえば、シーザー、ゲーテ、ニーチェ、モーツアルト、ヒトラー等数多くいます。
中性ヨーロッパでは性感染症は不品行から生じる破廉恥な病気で、一種の罪悪と考えられていました。そこで時には、公開の場でムチ打ちの刑が行われる事もあったそうです。
さて、1494年フランス王シャルル八世は突如大群を率いてイタリアに侵入した。ローマを攻略した後、翌年にはナポリを征服した。この時、軍隊に寄生する商売女を介して両軍の兵の間に忌まわしい奇病が急速に広まったのです。3万余のシャルル軍のほとんどの軍隊はこの病気のため破滅状態に陥りました。驚いたシャルル王は急きょ兵を引き上げ、ほうほうの態でアルプスを越え、フランスに逃げ帰ったのです。この醜悪な、病気をイタリア人は「フランス病」、フランス人は「ナポリ病」と呼び、お互いに罵りあいました。実はこの病気、コロンブス等が新大陸から運んできて、スペイン人が広めた「梅毒」だったのです。
昔は、予防法も確立されていなく、特効薬もなかったので、病状は結構悲惨であったと思われます。たとえば、精力絶倫で漁色家と言われているフランス皇帝アンリ4世には、有名な逸話が残されています。「アジャン地方を訪問したとき、皇帝は村の厩舎へ。馬丁たちが相手にする娼婦を急襲するためであった。皇帝はそこで、放尿の際に焼けつくような痛みを覚える熱尿症にかかった。」と記載されています。この症状は、現代医学の知識では、淋菌性尿道炎によると診断できます。「しばらくして発症した排尿困難に対し、外科医は皇帝の尿道に銀製の排尿管を挿入した。」と続いて記載されています。これは尿道炎の慢性期に合併する尿道狭窄という病気に対する、当時の治療の姿をあらわしています。
ちなみに現代では、早期に専門医による治療を受ければ、このような尿道狭窄はまず起こりません。
:: 第30話 :: 「50歳以上の男子5人に1人は前立腺肥大症」 ▲TOP
50歳以上の熟年男性になると、「夜中に何回も小便に起きる」、「日中もトイレが近い」「尿が出にくい」という症状を自覚するようになります。これらの症状に悩む男性の大部分が、「頻尿や排尿困難は、自然な老化現象の一つ。だから我慢するよりほかない」とあきらめているようです。
ところで、中国の古書に興味ある話が記述されています。何回も泰国に侵略されて業を煮やした趙王が、戦略専門家の某将軍を登用しようと考え面接したところ、「坐してしばし、三度排尿のため席を立つ」という頻尿症状を見て、「この将軍は老いたり」と判断し、登用を控えたということです。
しかし、このような頻尿や排尿困難が男の老化現象と決め込むのは大きな間違いです。
実はこれらの症状は、前立腺肥大症という病気が原因なのです。
さて、前立腺というのは、精子の栄養となる精液の約70%を作る臓器です。従って、子作り年齢である20〜40歳代では、前立腺は活発に働く必要があります。
しかし、50代以上になって子作りの必要性が減ると、前立腺の役目が終わって小さくなっていいはずなのですが、どういうわけか、肥大して大きくなってきます。そうすると、この前立腺、もともと尿道を取り巻いている臓器ですから、肥大すると尿道を強く圧迫することとなり、尿が出にくくなるというわけです。
この前立腺肥大症という病気は、50歳以上の熟年男性に起こるもので、50歳代の男子10人に2人位、70歳以上の男子では10人に5〜6人と、非常に多くなります。症状として、「夜中二回以上トイレに起きる」、「排尿が始まってから終わるまで30秒以上かかる」などの人は要注意です。他に残尿感、尿失禁、尿線の途絶、チョロチョロ排尿などがあります。
一番重い症状は尿閉です。膀胱に尿が充満し、下腹部は刺すように痛く、いまにも膀胱が張り裂けそうな苦しみです。この場合は、「導尿」という緊急処置が必要になります。
:: 第31話 :: 「古今東西、熟年男性を悩ませた前立腺肥大症」 ▲TOP
ほとんどの50歳以上の男性は、「尿がでにくい」、「トイレが近い」、「夜中にトイレに2回以上起きる」、「残尿感が気になる」などの症状を経験します。この症状は、前回の講座で説明したように、老化によるものではなく前立腺肥大症によるものです。実はこの病気、現代病ではありません。数千年前のエジプトやアラビアの医学書にも記されているように、古今東西熟年男子の頭を悩ませてきた病気なのです。
さて、杖というのは歩行の不自由な人を助ける道具ですが、19世紀のヨーロッパでは、内部に刀を隠した仕込み杖が暗殺の道具として活躍したとか。ところが、ニューヨークのロックフェラー博物館に陳列されている18世紀の頃の古ぼけた杖には、全く想像のつかない使い方が隠されていたのです。というのは、この杖の内部に仕込まれているのは、仕込み刀でなく、実はゴム製の管だったのです。
この管は、現代では導尿カテーテルと呼ばれる医療器具と同じようなものです。杖の柄がネジ式になっており、簡単に取り出すことができます。
そして、前立腺肥大症の人が排尿困難になって苦しい時、自分の手で尿道からこのカテーテルを挿入して、膀胱に溜まっている尿を出すのに使っていたのです。西洋では、ずいぶん昔から、前立腺肥大症の治療が工夫されていたようです。
ところで、自分の手で尿道にカテーテルを入れるという行為は、不潔で、危険に思われるでしょう。ところが、現代の医学では「自己導尿法」という正式な治療法になっていて、広く行われています。一般的には、前立腺肥大症の患者さんではなく、膀胱の神経が傷害されて排尿ができない神経因性膀胱という病気の患者さんが行っています。脊髄損傷で両手が使えない患者さんの場合は、特別に訓練を受けた家族の方が協力して行う場合もあります。
前立腺肥大症の治療は、軽症の人は薬で治療しますが、やはり根本的な治療は手術です。以前は、開腹手術が行われていましたが、現在は、お腹を切らない「経尿道的前立腺切除術(TURP)」が主流になっています。
:: 第32話 :: 「熟年男性の宿命病 前立腺肥大症の症状と診断」 ▲TOP
前立腺という臓器は、膀胱の出口に存在し、尿道を取り巻いています。たとえて言いますと、リンゴの果肉が前立腺で、真中の芯の部分が尿道というわけです。この前立腺が大きくなって、尿道を圧迫しますと、尿道が狭くなり、尿が出にくいという症状が出現するというわけです。
典型的な症状は、「夜中二回以上トイレに起きる」、「残尿感」、「チョロチョロ排尿」、「尿意が強くて排尿を我慢することができない」、「排尿の勢いが弱い」、「排尿のときおなかに力を入れる」などです。
診断は、最初に患者さんに排尿に関する症状のアンケートである「国際前立腺症状スコア」に記入してもらいます。そこには7つの症状の項目があり、それぞれの症状の軽い重いで点数が付けられています。その点数の合計が8点以上の場合は治療が必要となります。
次に、尿流検査を行います。特殊な機械を取り付けた便器に、普通の状態で排尿してもらいます。そうすると、自動的に排尿状態がグラフとなって表れます。そして、最大尿流率という数字が計算されます。正常は1秒に15mlですが、前立腺肥大症の患者さんでは1秒間に5mlとか10mlという低い値を示します。ついで排尿した後、超音波でお腹の皮膚の上から膀胱に残っている残尿を測定します。正常は10ml以下です。しかし、私の経験のなかでは、残尿が実に1800mlもあった尿閉の患者さんがいました。
前立腺の大きさも問題で、特殊な超音波装置を肛門から入れて測定します。この方法は泌尿器科専門医のあいだでは世界的に広く行われており、正常の大きさは20g以下です。中には、大きくなると100gを超える患者さんがいて、泌尿器科医の頭を悩ませます。
ところで、前立腺肥大症の簡単な自己診断をお教えします。「排尿が始まってから終わるまで1分以上かかる」人は要注意ですよ。
:: 第33話 :: 「熟年男性の宿命病 前立腺肥大症の治療法」 ▲TOP
治療法には、薬物療法と手術療法の二つがあります。症状が軽度または中等度の患者さんの場合には、薬物療法から始めるのが標準です。薬には、前立腺の容積を縮小させる抗アンドロゲン剤と前立腺の緊張を抑えるアルファブロッカー剤があり、両者とも肥大した前立腺による尿道の圧迫を減少させて、尿の出具合を良くする薬です。
しかし、薬を飲んだすべての患者さんに効果が認められるわけではありません。また、最初に薬の効果が認められても、数ヶ月後にはその効果が薄れていく場合もあります。一方、最初から症状が重く、薬の効果が期待できない患者さんもいます。このような場合は、手術療法を泌尿器科専門医が行います。
現在、手術療法の標準は、お腹を切らないTURP(経尿道的前立腺切除術)という方法です。尿道に内視鏡を挿入し、ループと呼ばれる電気イスを操作して前立腺を切除します。この時医師は、テレビモニターに映る操作の画面を見ながら切除を行いますが、その様子は患者さんも同時に見ることができます。手術時間は約20分です。
その他の治療法として、外来でもできる「高温度治療」があります。この方法は、レーザーやマイクロ波および超音波を照射して前立腺組織内の温度を45度以上に上げ、細胞の壊死を起こすものです。結果的に前立腺の大きさが減少します。その効果はバラツキが多く、3〜5年ぐらいしか効果が持続しないと言われています。また、最近アメリカで大流行しているのが、高出力の特殊なレーザー波で前立腺組織を粉々に蒸発させるPVP法です。出血がほとんどなく、体に対する負担が少ないのが特徴です。当院では近々、導入を予定しています。
ところで、前立腺を「(ペニスを)前に立たせる腺」と思い込んでいる人がいますが、「膀胱の前に位置する腺」というのが本当の意味です。ですから、前立腺を取っても、「立たなくなる」ことはありませんから、誤解をとくとともに、安心のほどを!
:: 第34話 :: 「とても稀な男性のシンボルの病気(その1)ペニスの骨折症」 ▲TOP
「ペニスが骨折する」なんてのは、ほとんどの人は聞いたことがないと思います。ところが、サル、イヌ、クマなど、おなじみの哺乳類動物のペニスには、ラテン語で「バクラム」と呼ばれる陰茎骨があります。バクラムは「小さな杖」という意味で、交尾のときにペニスの心棒の役目をする大事なものなのです。実は、このバクラムが交尾のときに骨折することがあるのです。これが正式に、「陰茎骨折」とよばれているものです。
一方、人間には陰茎骨がありません。ですから、当然ペニスの「骨折」はないのですが、ペニスが折れ曲がることがあります。まるで骨折した時のように、「ポキッ」という独特の音とともに、「く」の字に折れ曲がります。こんなハプニングを医学上は「陰茎折症」という正式病名で呼んでいます。
さて、人間のペニスには、勃起の主役として心棒の役割を果たす二本の陰茎海綿体とそれを包む硬い陰茎白膜があります。勃起時には、この陰茎海綿体に普段の5〜6倍の血液がドッと流れ込み、どんどん大きくなります。それと同時に外側の陰茎白膜も伸ばされます。しかし、この陰茎白膜の伸展には一定の限界があり、最高に伸びきったところが、硬い勃起ペニスとなるわけです。このような状態にあるペニスに強い外力が加わると、伸びきった陰茎白膜が断破して「ポキッ」と折れてしまいます。パンパンに張った風船が大きな音を立てて割れるのと同じ原理です。
「く」の字に折れたところから血液が皮下に広がるため、ペニスは暗赤色に腫れあがります。そして、激痛のため失神状態になることもあります。治療は緊急の切開手術となり、破れた陰茎白膜を手術糸で縫合します。
情熱を込めたマスターベーション、無理な体位のセックスが原因のことが多いのですが、偶発的な事故もあります。日曜の朝など寝坊している父親を起こそうとして、子供が勢いよく布団の上に飛び乗った時、「朝立ち」のペニスが折れることがよくあります。ご注意ください!
:: 第35話 :: 「とても稀な男性シンボルの病気(その2)プリアピスム」 ▲TOP
突然、男性シンボルが「立ちっぱなし」になり、それが何時間も何日も持続するとしたら、紳士諸氏はどう思うでしょうか。うれしい?ビックリ?
実はこの病気、正式には「持続勃起症」と呼ばれています。自分の意思と関係なく、ペニスが勃起を持続し続けるのは良いのですが、激しい痛みを伴います。ですから、セックスなど不可能なのです。
勃起は、前回でもお話したように、ペニスの支柱である二本の陰茎海綿体に血液が大量に流れ込んで起こります。ところが、この血液の出口が何らかの原因で塞がれ、血液が停滞すると勃起が持続します。このタイプは虚血型とよばれています。他方、入口から制御不可能な血液が流れ込む場合も、同じ現象が起こります。このタイプは非虚血型と呼ばれています。前者は緊急の処置が必要となります。
診断は、海綿体血液の中の酸素分圧を調べて、低ければ虚血型、正常であれば非虚血型と診断します。また、超音波で血液の流れを調べる検査も行います。
原因は、ほとんどが不明ですが、白血病などの血液病、神経の病気、外傷などでも起こります。20歳から30歳代の精力旺盛の年代に一番多く起こります。性交後ばかりでなく、どういうわけか、発病は夜間睡眠中にも起こるのです。
放置したままでは、勃起は数ヶ月持続した後、自然と消退します。過去最高では、7ヶ月だったそうです。しかし実は、治った後が問題で、ペニスは萎縮し、大部分が勃起機能障害(ED)になってしまいます。
ですから適切な治療が必要となるわけで、軽症では停滞している血液を注射器で吸引してから、交感神経刺激剤を注入します。重症の場合は、うっ血している陰茎海綿体と尿道海綿体や大伏在静脈との間にバイパスを作り、停滞している血液を流れるようにする手術をします。
ところで、この病気の医学用語は「プリアピスム」と言い、愛の女神アフロディテと酒の神ディオニソスの間に生まれた息子「プリアポス」のオチンチンがいつも勃起していたことに由来します。
:: 第36話 :: 「とても稀な男性シンボルの病気(その3)陰茎の曲がりや大小」 ▲TOP
ペニスは本来、真直ぐなものですが、稀に、上下や左右に曲がっている人がいます。これを医学用語で「陰茎湾曲症」と呼びます。排尿の時尿が真直ぐに飛ばないため、自分のズボンを汚したり、便器の周りを汚したりします。特に、勃起のとき屈曲が強くなるため、性交障害の原因になります。
原因は、陰茎の心棒である二本の陰茎海綿体を包んでいる白膜の伸展性のアンバランスで起こります。先天性と後天性のものがあり、前者の場合、治療は余分な白膜を縫い縮める手術をおこないます。後者はペロニー病と言い、白膜に出来た硬いしこりが原因で、まずビタミンEなどの内服やステロイドの硬結部への注射を行います。効果のない場合は、このしこりを切除し、欠損部を静脈などで覆う手術をします。
さて、日本人のペニスのサイズは、はっきりとした基準がある訳ではありませんが、平常時7cmくらい、勃起時12cmくらいです。
一方、欧米人では、勃起時15〜16cmくらいで、日本人の平均を上回っています。
しかし、ペニスの膨張率に関しては、日本人のを1とすると欧米人は0.8。つまり日本人の硬度は、欧米人をはるかに引き離なしているのです。
数年前米国泌尿器科学会で報告された黒人の青年のそれは、膝まで達するくらいの長さでした。しかし、残念な(?)ことに全くの勃起不全だそうです。実際問題として、性交には勃起時5cmもあれば、十分役に立つと言われています。というのは、女性の膣の前方約3cmの部分しか感覚がないからです。重要なのは、ペニスの硬さや膨張度であって必ずしも巨大なペニスは必要ないのです。
ところで、小さいペニスに関しては、「埋没陰茎」という病気があります。これは、肥満の人にみられるもので、もともと陰茎海綿体のサイズは正常なのですが、包茎が強く皮下脂肪が厚いために、ペニスが皮膚に埋没し小さく見えるものです。この場合は、ペニスの皮の部分を形成する手術をすれば正常の大きさになります。
:: 第37話 :: 「潜血尿って何?」 ▲TOP
赤い尿(血尿)は尿中に赤血球が混じった状態です。腎臓や膀胱などの尿路器官からの出血が原因で、泌尿器科の病気の重要な症状のひとつです。以前この講座で、「赤い尿は、赤信号」というお話をしました。その意味は、赤い尿(肉眼的血尿)は尿路ガンの発見の手がかりとして極めて重要な症状なので、危険(赤)信号という訳なのです。実際に、血尿の患者さんでは、泌尿器のガンが10人に1〜3人の割合で発見されると報告されています。
赤い尿が出現し驚いて来院した患者さんには、まず始めに尿を採ってもらい、その尿を顕微鏡で観察します。そして、赤血球が400倍率の1視野の中に5個以上あれば血尿と診断します。次に、その赤血球が糸球体性由来か、非糸球体性由来かを区別します。その区別には専門的な検査が必要になりますが、糸球体性由来と診断された場合は腎臓の実質から、非糸球体性由来の場合は腎盂、尿管または膀胱から、出血が起こったと診断することが出来るのです。
次に、出血を起こす病気、例えばガン、炎症、結石などを診断します。そのためには、膀胱鏡検査、レントゲン画像診断検査、超音波検査、尿細胞診などを含めた泌尿器科的精査が必要になります。
ところで、肉眼的には正常の色調の尿ですが、検査をすると尿中に赤血球が混じっている場合があります。この状態は潜血尿(顕微鏡的血尿)と言います。実は、地域や職場集団検診では多数の潜血尿陽性者が発見され、その頻度は10〜20人に1人と報告されています。そして、これらの潜血尿陽性の300人に1人くらいの割合で尿路のガンが発見されるのです。ですから、赤い尿でなくても、尿に赤血球が混じっている場合は要注意なのです。
ただし、赤い尿全てが血尿という訳でありません。例えば、便秘の薬を飲んだ後やアロエを食べた後に尿が赤くなる場合があります。血尿と区別するためには、泌尿器科医の診断をお勧めします。
:: 第38話 :: 「男の子の思春期 その1」 ▲TOP
江戸川柳に、「十三ぱっか、毛十六」という句があります。これは江戸時代の女子の思春期発現を指したもので、13歳ころに初潮があり、16歳で性毛が生えるという意味です。この現象を、医学的には第二次性徴と呼びます。
一方、男子の第二次性徴は、女子と同じように、大体13歳頃から16歳にかけて自然に起こります。この時期、まず脳の中である特殊なホルモンが作られます。そして、このホルモンが精巣を刺激して、男性ホルモン(アンドロゲン)が産生されます。このアンドロゲンの働きによって、第二次性徴が起こるのです。
そうすると、声がわりやのど仏、そして性毛が発現し、筋肉や骨も発達して男らしい肉体が作られます。ペニスや精巣も発育し、夢精も出現するのです。
ところで、高校1年生150人のアンケート調査によると、「声がわり」は高校1年までにほとんどの男子が経験します。「性毛」の発現は、一番早い子は小学4年、一番遅い子は高校1年と、かなりの個人差が認められますが、小学校6年から中学2年までの間で94%の男子が認めています。
ですから、遅くとも高校3年生までに第二次性徴が認められない場合は、ホルモン異常などの病気が考えられるので、泌尿器科専門医に相談するのが良いでしょう。
さて、睡眠中に性的な夢を見て、甘美な快感とともに下着が精液に濡れる…読者諸兄にも、若かりし頃そんな経験があるはずです。これが「夢精」という現象です、溜まりすぎた精子や精液が睡眠中にあふれ出して、射精するものです。いわば思春期のシンボルです。
ところが、この夢精の経験者は、予想外に少なく、高校1年までの間でわずか約4割の男子しかいません。一方、マスターベーションはほとんどの高校男子(90%)が経験しています。ということは、夢精の出現前にマスターベーションを覚えるため適度に精液が射出され、精液が溜まりすぎないために、夢精の経験が少ないと推察されるのです。
:: 第39話 :: 「男の子の思春期 その2」 ▲TOP
驚くことに、生後2歳から7歳ごろの男の子供のオチンチンが大きくなり、陰毛が生えてくることがあります。これを「思春期早発症」と呼びます。
さて、男の子供のオチンチンが大きくなり、性毛やのど仏、夢精などの出現は第二次性徴と呼びます。大体13歳頃から思春期に入ると、自然に起こります。この時期になると脳の間脳下垂体から精巣を刺激するホルモン(性腺刺激ホルモン)が分泌されます。そして、このホルモンが精巣のある細胞を刺激すると、男性ホルモン(アンドロゲン)が作られます。このアンドロゲンの働きによって第二次性徴が起こるのです。
思春期の発達には大きな個人差がありますが、ほとんどの男子は16歳頃までに第二次性徴の発現をみとめます。しかし、このホルモンの複雑な分泌の仕組みが、脳や精巣の先天的および後天的な病気で傷害されると、思春期の出現が遅くなったり、早くなったりするのです。
ですから、20歳を過ぎても、オチンチンが小さく第二次性徴の発現を認めない場合は、「思春期遅発症」という病気が考えられます。この場合、血液の中のホルモンを測定すると、性腺刺激ホルモンやアンドロゲンが低い値を示しますので、診断は比較的容易です。先天性の染色体異常や後天性の脳および精巣の腫瘍や炎症などの病気が原因となります。治療は、第二次性徴の発達に不足しているアンドロゲンを注射で補ってやりますと、改善します。
一方、これと正反対の病気が、冒頭に述べた「思春期早発症」です。思春期遅発症とは逆に、血中の性腺刺激ホルモンやアンドロゲンが成人並み以上の高値を示します。原因不明の特発性・体質性が多いのですが、脳や精巣の腫瘍などのホルモン分泌異常が原因のこともあります。又、副腎の腫瘍も原因の一つです。特発性の場合は、性腺刺激ホルモンの産生を抑える薬を注射します。また、アンドロゲンの働きを抑える薬を用いる場合もあります。脳や精巣、副腎の腫瘍が原因の場合は、手術で摘出したり、放射線で治療することになります。
いずれにしても、これらの病気について心配な方は、泌尿器科医か内分泌内科医に御相談してください。
:: 第40話 ::「老後を健康で暮らすための老年学の一断章その1・寿命はDNAが握っている」 ▲TOP
寿命とは、生物が生まれてから死ぬまでの時間のことです。その時間は生物の種類によって異なりますが、ほぼ一定です。例えば、動物の寿命はネズミで4年、ゴリラで50年、象で80年といわれています。最大寿命者の二枚貝では、実に220年です。
ところが、北米の砂漠に生育するクレオソートという植物の推定年齢は、1万1000歳といわれています。実は、植物が枯れて死んでしまうのは、温度や水分、栄養などの外的な原因によるもので、一部の植物は基本的には不老不死(?)ではないかと考えられています。
さて、生物(動物)の寿命をコントロールしているのが、遺伝子(DNA)と呼ばれるものです。細胞の中の核という場所に存在する染色体の末端に、テロメアと呼ばれるDNAが一定の長さで存在します。最近、このテロメアが寿命をコントロールしていることが分かってきました。すなわち、ヒトの細胞は50〜60回分裂するとそれ以上は分裂できなくなり、死んでしまいます。これは、細胞分裂のたびにテロメアの長さが少しずつ短縮することが原因です。すなわち、テロメアが一定の長さまで短くなると細胞の分裂が停止するのです。喩えて言うと、ロウソクがテロメアで、細胞分裂が炎に当たり、ロウソクが燃え尽きると、生物は死亡するというわけです。要するに、死は細胞のなかに生れた時からプログラムされているのです。
テロメア以外のDNAの異常により老化が進行する、極めて稀な病気があります。例えば、プロゲリアと呼ばれる病気では、普通の人の8〜10倍くらいのスピードで、老化が進みます。実際の年齢が10歳にもかかわらず、100歳ぐらいの老人と同じ体形や顔つきになってしまい、10代で死亡する現在でも不治の病です。
ところで現在、世界の研究者の間で、テロメアが短くならなければ老化は起こらないという発想で、テロメアの分解を抑える薬剤の開発競争が起こっています。秦の始皇帝以来いつの時代でも、「不老不死の薬」は人間の夢なのですね。
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